5.ノイズ対策

  仕事柄、ノイズは非常に気になる。
(この場合のノイズは、「音」ではなく、電気的ノイズ)
でもって、PC内部はどのぐらいのノイズレベルなのか、調べて対策してみました。
誤動作や安定操作にどれだけ寄与できるかは分からないけど、「精神衛生上」よろしい事と、自分の趣味でやっています。
もちろん、中にはこういう原因で不安定な物もあるんだろうなぁと思いつつ・・・


*コモンモードとノーマルモードの違いが分からない人は、勉強してから読みましょう。


対策と言っても、まずは現状が分からないと何とも言えない。
と言うわけで、PC内の各ケーブルについて、コモンモードノイズを測ってみました。

測定方法は、出来ればスペアナが良かったんだけど、取りあえずは100MHzのPCオシロとカレントプローブで測っています。
電圧はおおよそ(このプローブは注入用のため&カレントプローブなので、インピーダンスによって電圧が異なる)ですが、これだけ出ていればちょっとしたケーブルや回路のアンバランスでノーマルモードに変換されると、すぐにトラブルに結びつきます。

measurement
写真左奥のTAとHUBの間にあるのがカレントプローブ。
キーボードの手前にあるのが、100MHzのPCオシロアダプタ。
でもって、ノートPCでデータを取り込んでいます。

測定!

取りあえずは、PC内のケーブルを測定。

[IDEの電源系]
   CD−ROMまわり(対策前の波形)
   HDD(プライマリ)まわり(対策前の波形)
   HDD(セカンダリ)まわり(対策前の波形)

見ての通り、CD-ROMはともかく、HDDまわりは強烈にノイズが出ている。
サンプリングの限界もあるので正確ではないが、数十MHz以上の周波数帯域で出ている。
IDEケーブルを見て分かるとおり、シールド無しの平衡対で伝送しているので、これは放射されると思って良いだろう。
もちろん、放射以外にもユニット間での干渉も起こりうる。

シールドは、静電容量を生み出して、伝送速度に制限をしてしまうし、ツイストペアにするには対数が多すぎる(リターンは信号線と対になるだけの数はない)ので、仕組み上致し方無しである。
第一、シールドしたフラットケーブルぢゃ、コネクタ付けられない!

「ノイズ関連」の仕事をしているおいら的には、このプローブでこのレベルなら、「良くトラブルおきないなぁ」レベルである。

[電源系](対策前の波形)

これもまた、「そこそこいい感じ」で出ている。
成分的には、高周波系のノイズの他に、スイッチング電源からの物と思われる成分も重畳されている。
やっぱ、電源系は大切。(経験則)対策しないとね・・・

[その他(RS232C他)](対策前の波形)

外部インターフェースの例として、TAにつながっているRS-232Cを測定してみた。
内部ほどではないが、やはり乗っている。
成分は他と似たような物。トラブルの元になることもさることながら、外部からのイミュニティーが低いと、思わぬトラブルの元になる。


対策!

基本的にはコモンモードノイズの対策となるので、(というか、内部バス関連は伝送速度が速いので、回路中に素子はあまり入れたくない)フェライトコアで対策をする。
周波数成分から見ても数十MHz以上が主だと思われるので、フェライト1ターン(要は掴むだけ)でも数dBは期待できそう。
逆に言うと、1ターン以上は電源ケーブル以外は無理なので、複数のサイズの違うコアを入れることで、ピーク周波数をブロードにしてみた。
この辺のテクニックは、「種類の違うパスコンを並列に入れる」のと同じ。
単純にインダクタンスやキャパシタンスの足し算しかできない人は、理解不能。

でもって、対策の状況と結果・・・
[IDEの電源系]
   CD−ROMまわり(対策後の波形)
   HDD(プライマリ)まわり(対策後の波形)
   HDD(セカンダリ)まわり(対策後の波形)

波形を見ると、HDD系統はかなり効果があった。
どうしても、PCの場合ケースにきちんとボンディングしていない事によるグランドループや、パーツの品質で状況が変わるので、対策をすると「気分的には」よろしい状態。

[電源系](対策後の波形)

電源系も、HDDなどの装置類との間でのループを切れたことで高周波成分がかなり減って、気分がよい。
この測定では、どれも電源を入れて起動しただけの状態で測っているが、実際にデバイスが動作したときはもっと高いレベルでノイズが出るので、安心する材料としては十分。

[その他(RS232C他)](対策後の波形)

ここは、対策前後であまり変化無し。
FFTかけてみると、周波数成分が低い。
ここは、どうしてもやるなら別の方法だなぁ。
今のところは不具合もないのでまぁいいか・・・

このほか、USBやPS/2、ディスプレイ出力についても、そこそこ高い周波数成分が出ていたので、1T〜2Tのフェライトコアで対策。


こんな状態!

見るからにコアだらけである。
all-2

あんまりひどいので、現在はFDDとSCSIは丸ケーブルにして風通しを良くすると共に、コアを入れている。
IDEも、フラットケーブル用コアを入れた。
GeForce4
手前右下がIDE用フェライトコア、左のボードがSCSI(丸ケーブル)